『葡萄酒いろのミストラル』 シアターキューブリック
5月23日(水)~27日(日) 中野 ザ・ポケット.
メインテーマ 岡村孝子『ミストラル ~季節風~』
【後 援】 岩手県 岩手県教育委員会/花巻市/花巻市教育委員会
【スタッフ】 作・演出=緑川憲仁
【キャスト】
かりん/市場法子
しずく/谷口礼子
ユウキ/伊禮亜美[劇団fool]
オリオン/松本誠
所長/山崎雅志[ホチキス]
文明犬/大沼優記
ぜいたく猫/園山ことえ[スーパーグラップラー]
帝都運送/千田剛士
ミツエ/たなか智保[劇団阿佐ヶ谷南南京小僧]
水沢/茂久田恵
犬博士/小叉ぴろこ[7millions-ナナミリオンズ-]
バルコック/片山耀将
賢治/伊藤十楽成
昭和23年春。戦後復興で活気づく東京の片隅に、
家の外へ一歩も出られない引っ込み思案の雌犬「かりん」がいた。
飼い主の少年「ユウキ」は、情けなく思いながらも、
自分のそばを離れられないかりんを可愛く思っていた。
ある日、空から舞い降りてきたたんぽぽの綿毛「しずく」が、
かりんをからかう。
しずくに誘われ、おそるおそる
野良犬の溜まり場へと足を踏み入れるかりん。
かりんは、怖さの先にある未知の世界の楽しさを知り、
出会った犬たちとの交わりを通じて、
まだ見ぬ自分がいることに気づいてゆく。
そして、見上げた雄大な夜空に、
眠っていた記憶が星のように光を放ち始める──。
名前だけの存在から、関ケ原東西武将隊をきっかけに興味を持ち、ついに観に行くまで発展してしまいましたシアターキューブリックです。久々にログを残したくて、自分感想ぶつ切りメモ。レポとかそんな状態じゃありません。いや本気で。乱文あります。
万が一読まれる方、がっつりネタバレストーリーバレありますんでお気をつけて。観てないとわかんないし、観てても( ゚д゚)かも(笑)
初めての中野ザ・ポケット。小ぶりで、階段上の客席。
博品館みたいな感じなのかな。このくらいのハコでやったら楽しいだろうなぁって思うサイズ。
逆になった木の切り株みたいな舞台。
転換はないと思うから、ここでどんな展開があるのかワクワクしてくる。
ちょっと早めに入ったので開演前ラジオ「DJ YOH の噛み噛み放送局!」から聴けた。ちょっと噛んでたような気がした。なるほど・ザ・ワールドは本編まで引っ張るとは(笑)
冒頭。
ああ、これがかりん。耳をつけてるわけじゃないけど、ちゃんと犬。ふわふわして可愛い。茶色い柴犬だー、なんて思いながら観る。
風の声がかりんを励ます。
私はこういうガツンとセリフと曲と踊りで始まるのは好きなんだ。オープニング映像な感じのやつ。ミュージカル仕立てとは微妙に違う。
これはもしかしてこの劇団のパターンなのかな。関ケ原もそうだった。はっきり言えば、私はこれに弱い!(笑)
「大丈夫、どこまでも走れるよ、わたしは一人じゃないもの!」
(でもこれ、私の記憶の中で一歩間違えると小学校の時の「走れ!走れ!走れメロスよ!!」だ!(謝れ!緑川さんに謝れ!))
しずくのモノローグを通して、犬のかりんと少年ユウキの会話から本編が始まる。
かりんとユウキ、お母さんの掛け合いから、あれれ?これは犬と人が会話できるような昭和ファンタジーだったのかい?と思えっていると、馬(帝都運送)が出てきてユウキと咬み合わない会話が始まって、ああ、かりんとも会話してたんじゃなくて、会話になってたんだ、と改めて気づく。
仲の良い兄妹みたいな関係だからこそ成り立つ会話。今思うと、この二人(?)の関係も、後半の展開を考えると伏線ぽく感じる。
後半でユウキはかりんを突き放す。
それは厳しさの中に優しさもあるし、ユウキ自身も、自分と二人だった世界から外に出ていくかりんを見て、何かを決心してるんだろう。
この物語はもちろんかりんの話しなんだけど、本当は仲間に入りたいぜいたく猫、自由に生きる犬たちを横目に誇りを持って働く帝都運送、犬のようで犬ではない、作られた存在の文明犬……と、たくさんのドラマがぎゅっと詰まってて、切ない。優しい。哀しい。
あと、実はお母さんて大事な役だよね。
ユウキとかりんを優しく厳しく見守って、かりんをユウキの妹として、でもちゃんと犬として見てる。
「ユウキ、ちょっとそこ座りなさい」で始まった会話はおかしかったなぁ。そういう何気ない日常が見え隠れする会話がすごく好き。
自由に駆け抜けるオリオン。
長身の松本さんのオリオンは、紀州犬とかそんな感じ。ざらりとした灰色っぽい毛並みは野良犬を表しているのかな。
家から出たことがない、鼻が効かない、道に迷う……およそ犬とはいえないかりんの反対側にいるオリオンが、ぐいぐいとかりんを引っ張っていく。かりんにとって初めての仲間としてのオリオンは目を引いた。
星めぐりの詩がかりんの中にあって、それが「トシ」に戻ったきっかけだったのかなぁ。
そしてちょっと謎な所長。
どこか飄々として、モノを知ってるかと思えばぜいたく猫に怯えたりして、面白い存在だった。ダンディなのかそうじゃないのか(笑)
「それが犬の事務所だ」
もやもやをすっきりさせてくれる場所。でもそれってとても大切な場所。
犬だけじゃなくて、猫もすっきり……あ、それはオリオンの手柄だ!(笑)
文明犬は本当にフィクションな存在。でも文明犬は犬博士と犬たちをつなぐ存在で、後々それが重要になってくるのだけれど、それだけじゃなく、走れない。食べられない。吠えない。犬なのに犬じゃないかりんにもどかしさを感じる文明犬がかりんの背中を押す。
だがロボットだからって時折冷酷すぎないか(笑)。「肉だ肉」に不意をつかれて噴いたよ、どっちかというと意地悪だろお前!よく見れば悪い顔をしてるじゃないか!(笑)
桃太郎のオチが千秋楽に変わったようだけど、なにやったんだろう。気になる!
犬の事務所の三匹のやりとりが大好き。チマチマとはいるコントだけじゃなくて、やり取りそのものというか、トリオ感がジワジワ来る。
お悩み相談では、人間ドックの前日にフルマラソンはアカンwwwwwとか心のなかで盛大にツッコミを入れてたよ!血液検査と尿検査で完全に引っかかるよ!!(前日にレッスンに出たバカだもんな!)
来週私は健康診断だからな!(笑)
そして帝都運送。
千田さんの飄々としつつどこか拗ねている馬がとても良かった。
かりんに対して敵意はない。バルコックではなかった段階で、基本的には良い人(馬)なんだよね。
名前こそは又三郎だけど、最後にはみんなと友達だと気づけて良かったなぁ。格好いい。
そしてちょいちょい入るツッコミが可笑しかった。
そしてバルコックだ。全編通して「バルコック」として出てくる存在。
悪意があって怖い存在………っていうより、得体のしれない怖さだったなー。あんなのに追われたら全力で逃げる。そりゃ逃げる!って感じで本当にハマっていたと思う。
(って、片山さん、前回は文明犬だったのか……ええー……)
犬のバルコックのバラには爆笑してしまったー。なんだよアレ反則だろ!(笑) 衣装似合い過ぎだし!!
駅のバルコックの文明犬いじりは台本なのかな、ある程度アドリブで日替わりなのかな。あれ、ことばで笑っちゃう部分多いと思う。悪い笑顔だった。大好きだ。
犬博士の「猫を見ると『犬』って~」という台詞のあとのぜいたく猫とのドタバタも笑ったなぁ。
あと、ぜいたく猫とマリコのやりとり。
あれ、ちゃんとあの猫と会話する機械は機能してて、ことばは通じてるのかな。ぜいたく猫の後半の癇癪とか、噛み合ってない会話を考えると適当にしか通じてないのかも。
他もそうなんだけど、ぜいたく猫も配役うまい。声とか全体の雰囲気がぴったり。
犬の事務所でのオリオンに押し切られてるとことか、上野駅での行動とか、天邪鬼だけど良い奴なショパンが可愛かったよ!
水沢もいいキャラクターだったなぁ。モダンガール……ガール!?て感じで、突き抜けてた。
そしてクライマックスの辺りいきなりG-クレフかかって焦った(笑)
どうにもタイトルが思い出せなかったけど今思い出した!ChickenWingだ。
曲の展開がわかってるからどうなるんだろうと思ってたら、うまいこと使ってたなぁ。
いつも思うんだけど、曲の使い方が上手い舞台ってやっぱり面白い。
どうやって選んでるのか気になるのです。
ところで、かりんはやっぱり犬としてユウキのところに戻るのかな。
ユウキの飼い犬として、今度は外でも遊んで、仲間もたくさんいる犬として生きるのかな。
「待っている」のは人か、犬か、両方か。
少なくともわかっているのは、もう、かりんにとって、世界はお母さんとユウキだけじゃないということだけだなぁ。
犬じゃない犬かりんが、成長して犬になっていく話かと思っていたら、確かにそうだったんだけど、話が進むに従って、賢治がそうやって絡んでいくのか!と途中で泣いてしまった。
「決別の朝」は、授業でやったんだろうか。そんなに読み込んでいないはずの賢治の話の中では珍しく、印象に残ってて覚えている。
多分最初にしずくを運んできた花巻の空気、所長の犬ではないという指摘、文明犬が思い出した犬博士の生まれ変わりの話、オリオンと一緒に見た星……いろんな出来事の何一つ欠けても、かりんがトシを思い出すことはできなかったと思う。
ベースにこれでもかと言わんばかりの宮沢賢治。
多分好きな人なら、これは!これは!ってのが多いんだろうなぁなんて思う。
あと、東京の地理とか、東北への道、花巻、知っていれば知っているほど、頭の中でいろんなシーンをリアルに感じられるだろうなぁ。
私の中のなけなしの経験で、一生懸命地図を辿って風景を辿って。東北行きたくなった。花巻、しずく石。
そんなわけで、終演後ガイドブック買っちゃったんだけどね!!(笑)
↑続きを隠す